・啼く蝉の枝を見回す網の子ら
・木の周り奈落の底か蝉の穴
・途切れ鳴き儚き命油蝉
・烏賊釣りの揺らぐ漁火日本海
・目を奪う森の緑と彼岸花
・梅雨晴れ間日干しの衣類猫がジャレ
・見下ろすも先々閉ざす梅雨景色
・入梅を避け断食続く縁の猫
・粋なるやコスモス残す土手除草
・開拓も負けじ陣取る野菊かな
・車窓越し甲賀の里や稲穂刈り
・サラダ食う音爽やかな朝餉かな
・ガラス窓触れて冷ややか朝景色
・春嵐テトラで飛沫波止に舞い
・小魚が群れ見え隠れ布袋草
・春彼岸町内総出の溝浚え
・幟竿や風が靡かす子の衣服
・夜濯を干して直ぐ様通り雨
・布袋草岸辺さ迷い下り消え
・残り湯で肌着夜濯ぎ一つ星
・早苗束手作業全て千枚田
・目に映えし野山の緑深呼吸
・遡上せる餌食の新子摂理なり
・風に折れ哀れ一枝挿し木せり
・橋の下引き潮運ぶ花筏
・散流の水面桜や己栄枯
・春陽気空を見上げて気が漫ろ
・剪定や音聞き外の天気知り
・香の花も眺めて嗅げぬ花粉症
・蚊の羽音耳元刺され浮腫みあと
・雨上がり脱け殻運ぶ蟻の群れ
・気障りか蝉鳴く植木猫が追い
・動くほど顔に滲み出る玉の汗
・黒鯛の船中乱舞型競い
・咲き乱れ優雅さ競う花菖蒲
・東風揺らす池に反映波紋月
・轟音や花火も見えぬビルの影
・外に出で花火見たさのビル隙間
・彼方まで夜空に花火丘の上
・空梅雨になれと見上げる空の西
・緑陰に夜遊び過ぎて猫昼寝
・・・・・・・・・・・・・・・
・旅支度好天祈る入梅最中
・身支度の雨具薄物再チェック
・水草生う流れや清き宮の川
・風薫る神宮備林川恵み
・葉桜に重き水滴憾み雨
・五月雨木々だけ恵み旅の宿
・畝計りマルチで覆う胡瓜苗
・育苗に恵む春雨天拝み
・種おろし何れも二枚発芽の葉
・雨続き日増しに伸びる苗間引き
・地理音痴霞み迷わす分れ道
・一時の調べ安らぐ春の宵
・・・・・・・・・・・・・・・
・風光り琴の音癒す座る縁
・日永聴く有線の曲鳥応え
・食事後春眠誘うお琴の音
・屋根叩く春雨微かリズムあり
・囀りや耳かす我を友とせり
・鯉幟甍の彼方見え隠れ
・囀りやいずれの枝か潜む鳥
・蕗覆う庵の庭や過疎の村
・山椒の芽色香引立て旬極む
・春霖や夕餉の手抜き有合わせ
・染めし窓熱田の森に春陽落ち
・ベランダの春風肌に風呂上り
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・新緑に辿りし山路一呼吸
・カサカサと蠢く獣竹の秋
・インコ逃げ追い目侘びく鳥雲に
・小枝活け一足早く咲く桜
・裾野から頂朱染め野焼きせり
・青空を塞ぎ狭めし野火走り
・蕾食む哀れ野鳥の浅き春
・北の風四方舞う屑街汚し
・囀りに応えて騒ぐ籠の鳥
・水細り溝草茂る秋の小田
・穭田の茂り虚しき余力かな
※穭田⇔ひつじた
・朝採りの旬なる惠零余子飯
※零余子⇔むかご⇔山芋の実
・朝もやの透けて咲く花大豆畑
・朝霧の濡らす茶畑畝映えり
・山間地樹木の紅葉迫りをり
・紅葉の葉選び歩むカメラマン
・煽る風岩に毀れり初紅葉
※煽る⇔あおる、毀れ⇔こぼれ
・山紅葉錦の帯に広げをり
・葉衣を朱紅に纏う楓の木
※纏う⇔まとう
・香で包み紅葉彩る古寺の庭
・藤の実や眺めて浮かぶ花の頃
・近眼で探す葉隠れ青蜜柑
・青空や風伝おろし山下り
・鳥食まず枝にたわわな信濃柿
・風吹けば銀杏の実避け遠回り
・落穂拾ふ小鳥集まり奪い合い
・野良の猫落穂群がる鳥狙い
・時の人何れは吹かれし秋の風
・厭きもせず施設で歌う紅葉唄
・他国船恐れず犯す台風裡
・夜釣りの湖空見上げれば月ふたつ
・寝転んでメカにお任せ体育の日
・車椅子マラソン参加体育の日
・宵闇や蠢く野良の餌さ漁り
・森の木々沼に反映イワシ雲
・木犀に夜目の如きや白い杖
・終日の観光巡り秋日和
・命日や香るモクレン妻偲び
・蒸らす香やただよふ匂い今年米
・山に入り目印付ける自然薯
・山の秋恵みも輪廻土に帰し
・葉に隠れか割れ目無く生る通草
※通草⇔あけび
・青々と枝に房なる胡桃の実
・柿実り完熟狙う百舌カラス
・里の柿かじって試す猿の群れ
・稲刈りや笑顔の家族語り合い
・野仏の一面染むる曼珠沙華
・別れ蚊や止るも刺せず何処去り
・山里に流れ聞こえし鹿の声
・颱風の乱す行路宵に和気
・名月や雨雲去って影映し
・海荒れも雲無く晴れて良夜かな
・電線や蜘蛛の巣如し星月夜
・吹く風に何処流るや鰯雲
※鰯雲&鱗雲⇔秋の季語。
・出でし月窓辺で眺め偲びし夜
・街明かり雲間に覗く夜半の月
・進む道川風抜けて芒揺れ
・盃の酒映した月が揺れ動き
・天高く心も和む野辺の風
・沿道の人目奪いし蔦紅葉
・土手沿いの川面に映えし曼珠沙華
・彼岸花行き交う人も振り返り
・道草や風爽やかな下校かな
・彼岸花紺碧空に野辺埋めし
・遠方のマイフレ便り憂う秋
・天高く紫煙揺らめく吸う煙草
・夕凪に水面一筋入り日かな
・落陽や燃やす水面の夕日陰
※夕日陰⇔夕日の光
・人招き招かぬ蚊まで家に入り
・朝和ぎに空しき素針早合わせ
※朝凪⇔朝和ぎ
・秋茄子を味わう夕餉一人膳
・稲妻や豪雨齎し眠り覚め
※雷⇔夏の季語、但し稲妻⇔秋の季語
・剣葉が伸びて広がり稲の花
・白露や光る一葉散歩道
・秋潮に湧く青物で弧なす竿
・空靡く雲や移ろい鰯雲
・東雲や薄れ広がり羊雲
※鰯雲・羊雲・鱗雲⇔秋の季語で秋雲
・羽根休め辛蜻蛉目を見張り
・花萎み儚き芙蓉風で落ち
・夜鳴きする蝉の末期か常夜灯
・湾の外船縁濡らす土用波
※土用波⇔台風の余波
・土用波白妙の磯飛沫飛び
・秋潮やナブラ追い行く遊漁船
※ナブラ⇔魚群
・秋立や変わらぬ陽気天も地も
・腹満たす夜食代わりの衣被き
※衣被き⇔きぬかずき⇔里芋の子
・新涼の野道遥かに海薫る
・朝焼けや一つ煌めく星も消え
・水遣りで出でしベランダ蚊の餌食
・道行かば鮮やか紅の百日紅
・秋暑し季変わり風の吹かぬがも
※がも⇔願望の終助詞
・隠れ蚊が部屋の消灯待つ獲物
・牝の蚊や男所帯へ忍び込み
※刺す蚊は牝だけ
・空染めし釣瓶落としの夕日かな
・出でし霧山道覆い草木濡れ
・雨憂い終日なりけり日長かな
※日長⇔ひなが、秋の季語。
・信濃の地コスモス多く野辺に咲き
・吹き下ろし赤蕎麦の花寄せ返す
・行楽を拒む行程秋の雨
・松茸の産地の宴異国産
・白妙の衣か裾野蕎麦の花
・枝たわわ食べ放題のリンゴ園
・梨狩りや右往左往で実を選ぶ
・バスの客試飲ワインで夢心地
・厚き雲千切れ薄れて鱗雲
・芭蕉展翁惹かれし人数多
・草庵や芭蕉葉揺らす音淋し
・子逸れの啼く雁哀れ迫る闇
・遊鳥の群戯れし堀の秋
・渡り鳥蕃殖る栖舞い戻り
・秋雨や偲ぶ涙かはせを展
・秋空の峰遥か先伊賀の里
・高枝や一つ残りし木練柿
・凪ぐ風に上がる煙や天高し
・百草の花摘む老婆優し笑み
・迷惑な千草蔓延る放置畑
・八千草も諸行無常の哀れ育
・賑わいの跡方失せて破蓮
・吾妻屋や花瓶寄せ活け草の花
・一滴受け止め光る草紅葉
・北風に遠出の釣り場揺れる船
・沖の釣り咥えた鮃竿絞り
・肌寒き部屋の寛ぎ湯浴みせり
・寒潮に波止の小魚去り何処
・湾の凪ナライ強まり沖が時化
・鳥居づく熱田の杜も紅葉づき
・用足しと夜着の一枚床に添え
・寝仕草に衾被りて朝が明け
・冬ざれや朝餉のガスに手を翳し
・枯れ園に寒水石の際立てり
・塩鮭の香漂う部屋残り飯
・葛湯点て座右に俳書居間で詠み
・凩の吹き抜けし庭山のゴミ
・舞う紅葉寺の甍を染にけり
・寺紅葉無慈悲な風が葉を払い
・去る人に募る侘しさ涙月
・空遥か夕暮れ何処渡り鳥
・揺れる枝樹虫を探し食む小鳥
・胡孫眼庭の枯木に株宿り
・鳩一羽軒に雨避け秋思かな
・悪童も渋き柿食べ唾を吐き
・恵み雨落ち鮎群れて梁に落ち
・船揺らし釣行拒む秋の雨
・錦秋や湖面染にし木の葉舞い
・南風に流れて染めり雲錦
・増す夜冷え賑わう簗の湖産鮎
・目を奪う檀家の植えた彼岸花
・菜園の朽ち果て目立つ秋虚し・
・束の間も夕焼け空が雲染めり
・床に入り静寂に微か虫の声・
・窓辺寄り虫の音何処耳近し
・雨上がり燃ゆる夕焼け西の雲
・嵐去り満月隠す流れ雲
・鴨川の橋桁洗う台風渦
・荒天も夕焼け気配西の空
・雲の峰光り輝き陽射す森
・冬ざれや鵜舟陸揚げ侘び募り
・冬ざれや樹々を素抜けて肌襲い
・葉に下がる蓑虫一つ落つ定め
・畑林増え過ぎ荒らし薬喰
※薬喰⇔薬となる鹿肉
・木守柿目敏いカラス的定め
・木守柚子鳥食まず残り風呂に入れ
・冬萌えに戯れ鳥や除草跡
・散歩犬彷徨い歩む小春かな
・冬めくや恋しと眺む窓明かり
・風の入る衣服の隙間寒さかな
・照る窓辺樹々の彼方に月冴ゆる
・木枯らしや掃けば又追い限り無く
・妻子待つ帰宅足枷夕時雨
・落葉踏む無常の響き夕間暮れ
・浪の花飛ぶ地閉ざされ哀れなり
※珠洲市の友人、遠隔地に妻が入院
・真似て採り括った腹のなめこ汁
・山歩き冬茸無視の街の人
・凩に袋飛ばされ猫がジャレ
・魅せし碧躊躇い掴む龍の球
・鮟鱇の姿ぞ哀れ吊るし切り
・気が滅入り買い出し鈍る歳晩雨
・恵み受け農夫降り立つ苅田跡
・遥か先中洲広げり鴨の群れ
・鴨逃げて銃音響く夜明け前
・長旅の羽繕ひし湖入り鴨
・凩や打ち波散らし飛沫寄せ
・木枯らしや雨戸入りしか音微か
・吹き降ろす木枯らし断つ鎮守杜
・チリ鍋にゲテモノ加え遠き箸
・飼うインコわれ一番とセロリ喰い
・夕冴える西空仰ぎ雨戸閉じ
・初雪や道染め乾き夕に晴れ
・初雪や職人阻む外仕事
・箸眺め河豚チリ作り招く友
・身支度し出足止めり冬の雨
・朽ち早き甘き蜜柑や良し悪し
・甘蜜柑子供満たした郷恋し
・夜話や長居に耽る釣り談義
・牡蠣船の底に群がる居着き魚
・冬怒涛磯場覆って釣具呑み
・時雨れ空心も塞ぎ部屋籠もり
・白波や海濃き青さ冬の海
・船溜まりナライの時化で軋む船
・寒ブリの品添え便り釣り仲間
・姿知り何れは口に鮭児かな
・秋味の港忙しき時化の後
・急の雨鳥が紅葉に雨宿り
・雨打たれ紅葉に雫葉が垂れ
・枝隠す紅葉たわわな庭の樹々
・束の間を森染め消えし寒茜
・師走朝日の出拝んだ散歩道
・朝一の市バス客無き大晦日
・初に舞う仕事納めの清め雪
・住む魚身を潜めたり寒の川
・空眺め雲追うイブの時虚し
・御手洗に少し躊躇う寒の水
・親を見て真似る参拝幼い子
・初詣小銭を探すお賽銭
・歩く子等出店に興味初詣
・募る寂び独り暮らしの冬座敷
・朽ち荒れし老いし我家と冬座敷
・寒の川流れや細りやがて消え
・森彼方小さく遠い寒の月
・人影も侘募るのみ寒の月
・窓越しに初雪透かし秋葉山
・朱色染め夕日に映えり寒波雲
・向かい風肌刺す寒さ襟を立て
・集う子ら手作り独楽で技競い
※独楽⇔こま
・初日の出波打ち返し磯洗い
・引き波に貝殻残し浜の凍て
・小船乗り高波揺らす冬の沖
・蟹料理今朝陸揚げに舌を巻き
※三国蟹のWタグは別名献上蟹
・川の魚深場で耐える渇水期
・風花や毛濡れし猫が縁に入り
・坂道の怖き凍結忍び足
・成人日小雨が濡らす晴れ姿
・旅立ちの出足鈍らす舞う小雪
・峠越えゲレンデ覆う銀世界
・朝日浴び赤らむ氷柱岩の肌
※氷柱⇒つらら
・微かなり東の空に冬の月
・小雪舞う車窓遠望名残旅
・吹くナライ行く手拒まれ後退り
・旅の膳蜂の仔飯に後退り
・地元民動く蜂の仔舌鼓
・鈴の音も風雅人絶え宜長忌
・秋山に辿る追憶浮ぶ友
・再会も別れ始めか爽やかに
・黄葉の山紅僅か色が冴え
・山の川水澄み流れ侘び深し
・鐘楼に秋気澄みたつ山辺行
・夕風に花揺れ薫る花野径
・夕闇に銀杏黄葉の道標
・自然薯石を絡めて奥へ逃げ
・長薯の多き堀跡河原沿い
・秋麗舞う円気まま鳩の群れ
※秋麗⇔あきうらら
・秋の夜に静寂を破る隙間風
※静寂⇔しじま
・夕風の揺らすもみじや鳥潜み
・病む友の癒える日祈る浅き春
・捨て猫の粗末な塒春浅し
・野良親子飢えた子猫が痩せ細り
・雪解けの日差し眩しき今朝の窓
・照る陽差し次々落下屋根の雪
・毀れエサ庭木で待機百千鳥
・今期初目にする辺り銀世界
・深々と降る雪眺め為す朝餉
・見下ろせば雪に足跡白に黒
・積もる雪小雨で嵩を減らし消え
・余寒耐え世に憚りて愚痴重ね
・若草の踏み行く我や罪辛く
・いと哀れ植えた鉢花寒雨濡れ
・老いし連れ巡業癒す福寿草
・春泥に互い気遣い西国路
・福豆や一手間違え店並べ
・恵方巻きネタの良し悪し金次第
・鍋焦がし寒風入れて煙抜き
・春永の失敗続き気の緩み
・春眠や鳥籠脇で添い寝せり
・窓叩く深夜北風化現かな
・朝仕事庭にナライの置き土産
・御手洗の凍てし湧き水清め人
・庭整備息抜く暖に顔緩み
・外仕事凍てつく手足遣り残し
・雪上がり雲切れ覗く青い空
・耐え難き各地軒並み氷点下
・空模様寒さ苦手な友案じ
・中部地区天気図示す雪マーク
・タミフルも効かず蔓延冬猛威
・地に根付く三社参りの西日本
・雪見酒長の湯治に身も解れ
・身を病んで治癒に専念松の内
・山路来て凍て付く手指摘む野花
・紅梅香風に靡かれ嗅ぐ淡さ
・終日の交尾絶倫飼うインコ
・怪我を負うエリア争い猫の恋
・転寝の終日温し恵み雨
・移ろいや一雨毎の温かさ
・外温し押され物見車椅子
・春の息微かな香り風にのり
・冴え返り湖岸の風が肌に触れ
・赤子真似夜な夜な交わす猫の恋
・雨上がり薄れし雲間冴え返り
・風花も地を育めし程湿り
・転倒に怖き凍結朝の道
・成人の日雪舞い注ぐ晴れ姿
・喪も明けず親を偲のびし注連の内
・福寿草鉢の目敏き出入り口
・打ち返し荒立つ波や初日の出
・三が日ペットと戯れ部屋籠り
・地震渦の津波押し寄せ凍てる潮
・ソロモンで地震の津波ウネリ寄せ
・冬木立鳥の巣一つ残しをり
・枯木道電飾点けて客を惹き
・冬枯に深淵群れし哀れ魚
・明日熟れし石を枕の冬苺
・寒菊や刺し身に添えて色あわい
・枯蓮や様の変わりに人も失せ
・山茶花の朝毎眺む寝床窓
・山茶花の落花集めり母偲ぶ
・高山の見真似で挑む緋蕪漬け
・水枯れて岩肌顕わ源流部
・吹く風に音を奏でし枯尾花
・枯れ葉舞うビルマ街角つむじ風
・冬の月背比べ競うのっぽビル
・一茶忌や情けの心諭しめり
・色衣石灯籠に落葉乗り
・黄葉や脇役担う朱の落葉
・置き竿に魚信見逃す磯焚き火
・沖時化て焚き火で和む船着場
・遥か峰頂抱く雪の帯
・獣道硬き足跡雪の上
・迫る闇南風の雨雲低くたれ
・網戸越し外で煩くカラス啼き
・烏賊を釣り美味し沖漬け酒の友
・耳鳴りか微かに届く蝉の声
・盆踊り見習う稚児や親を真似
・膳並ぶ南風入る窓辺海の幸
・吊るし章魚人目を誘い風に揺れ
・流れ雲重ね切れ消え真綿取り
・夏の宿客にもてなす日干し魚
・蝉好む街路の木々や樫桜
・蝉時雨見上げて子等も声自慢
・啼く蝉や短き命輪廻なり
・儚くも終焉なるや油蝉
・病葉や落され毎に枝が癒え
・波止に出で足場を濡らす土用波
・増水で迫る水嵩キャンプ場
・瀬の鮎や映える追星岩に就き
・闇の先幽玄醸す鵜の匠
・篝火に操る鵜縄技極め
・土用丑食べる日伸ばす主婦の知恵
・暑いねとドラマを見入り目を拭い
・左利き酒を注ぎ足す一夜下酒
・山清水落ちて水音忍石
・渓の水流れや消えて滝の音
・せせらぎに河鹿鳴く音や闇迫り
・雨が去り峰の彼方に虹の橋
・千歳より真清水分かつ棚田畦
・乳母車を手押す母親日陰入り
・水風呂や火照る日中の癖となり
・炎天に停め置く車サウナ風呂
・降車して無風の暑さ宵の外
・葉表で鳴いて雨乞う雨蛙
・ビルの窓鳩の居場所が片陰り
・雨音や羽化を窺う蝉さなぎ
・蝉生まれヨチヨチ歩む幹の上
・蝉生まれ浮世の怖さしらぬ顔
・初蝉の鳴き声盛んつられ羽化
・夕立に裾捲り行く乙女達
・雷響や鳥怯え行き木々で啼き
・スイカの香漂う川に鮎多き
・闇の川チラチラ動く夜振りかな
・濁川鰻釣る夜の月明かり
・黒南風や足の遠退く船の釣り
※黒南風⇒くろはえ⇒梅雨の雨雲
・鮎香る夕餉の宴窓の外
・朝開き夕べに萎む蓮の花
・鬼灯市色付きゐたり売る娘
・品運ぶ朝顔市の朝まずめ
・朝顔の八方蔓や影を生み
・朝顔や夜明けに眺む染物師
・軒に植え蔦野菜伸び片かげり
・梅雨晴れ間清々しかり朝の風
・雨上がり稲穂波打つ青田風
・夕まずめ河畔の微風汗を止め
・逢瀬の夜刺す蚊に耐えた罪の跡
・面白き寄り添い分かつ夏の雲
・夏空にやがて消え行く浮かぶ雲
・朝夕の風心地良き夏初め
・星の恋ベールを閉ざす雨の雲
・七夕や願いを吊るす門の子等
・耳鳴りか微かに届く蝉の声
・網戸越し外で煩くカラス啼き
・迫る闇南風の雨雲低くたれ
・東雲に梅雨明け兆す明く隙間
・夏二度目癒えぬ傷跡震災地
・夏踊り見習う稚児や気直なり
・梅天に店頭疎ら客目減り
※梅天⇔梅雨
・与野党や国民真意蚊帳の外
・浴衣着の去りし静し女香を残し
※清し女⇔すがしめ
・烏貝烏合の如く護岸群れ
・昼下がり旱厳しき浜の砂
・なめくぢら形跡光り姿無く
※蛞蝓⇔なめくじ⇔なめくじら
・でで虫の角は白杖伸び縮み
※蝸牛⇔かたつむり⇔でで虫
・角左右振りつつ進む蝸牛
・蝸牛葉先が曲がり地に転げ
・蓮池や鮮やぐ紅に渡る風
※鮮やぐ⇔あざやぐ
・廃屋 に覆う凌霄花御殿
・夏空にやがて消え行く浮かぶ雲
・宵闇に甚平纏い闊歩せり
※纏い⇔まとい
・雨傘も日傘代わりの梅雨の明け
・風蘭や花縺れ咲き香の微か
・風蘭の老樹着生涼の風
・梅雨豪雨瓦礫流木川抱き
※風蘭⇔風貴蘭。縺れ⇔もつれ
・風蘭の老樹着生僅かな香
・風蘭や花縺れ咲き微かな香
・梅雨豪雨瓦礫流木川抱き
・梅雨晴れ間眩しき陽射し海恋いし
・上棚を青物乱舞夜焚き灯
・待つアタリ静けき闇の夜釣り人
・夜釣り船釣り人せかすマズメ時
・ポイントや夜釣り火翳す沖の船
・所作悪き浴衣の親子真似る子等
・遊歩道紫陽花濡らす小糠雨
・道端の咲きし4片に我が手添え
・梅雨に濡れ収穫祭に人集う
・下準備剥く玉葱に涙溜め
・子を委ね朝に夕啼く不如帰
・半夏生公園憩う高齢者
・夏花を窓辺に活けし旅の宿
・降る雨に四片の藍も深く冴え
・七変化真似る国会与野輩
・紫草の可憐な小花日々眺め
※紫草(むらさき)
・天道虫人を怖じずに目先の葉
・半夏生憩う敷地に車止め
・花慈姑農家悩ます稲田草
※沢瀉⇔花慈姑⇒はなくわい
・夏の川居づく鳥類パラダイス
・番鳥仲睦ましき梅雨の堀
・城の堀一列泳ぐ鴛鴦涼し
※鴛鴦(おし・をし)⇔水禽
・通し鴨都会の川に居つき住み
・軽鳧の泳ぐ姿や子供見ず
・かるの子や親に連れられ一文字
・初夏の渓淵出づアマゴ瀬に姿
・荒天日船客僅かイサキ釣り
・新月や漁火効果ナブラ寄せ
※ナブラ⇒魚群
・暗闇に漁火照らすマイカ釣り
・漁火の風物夜釣り其処彼処
・いかずちや心揺さぶる音光
・梅雨晴れ間行き先思案ナビ頼り
・間伐や雨水で湿る竹落葉
・風の度波打ち光り田植え水
・帷子の目立つブラジャー知らぬふり
・様の好き垂れ目を隠すサングラス
・早乙女や手慣れた早さ老婆技
・飛来鵜や魚道群れて遡上阻止
・軒の巣へ雌雄で餌やり親燕
・羽抜鳥忙しき掃除飼うインコ
・夕暮れに飛び跳ね競う登り鮎
・竿先に鈴付け闇夜鰻釣り
・蛍火に見惚れる2人肩を寄せ
・闇を分け飛び交う蛍静寂かな
・咲く海芋白色仄か夕間暮れ
・雲間から月出で照らす花明り
・孫の背の高さの幹に咲く桜
・花吹雪煽られ舞って浮く水面
・木漏れ日や我慢暫しの糸桜
・雨風に最後の名残花筏
・雨上がり御在所岳に花の雲
・夏浅し露地物並ぶ道の駅
・湧水で育てし岩魚舌鼓
・夏めくや窓際避けるバスの客
・富士仰ぐ本栖湖湖畔麦の秋
・富士写す本栖湖岸辺風薫る
・雲間から月出で照らす花明り
・孫の背の高さの幹に咲く桜
・花吹雪煽られ舞って浮く水面
・木漏れ日や我慢暫しの糸桜
・雨風に最後の名残花筏
・雨上がり御在所岳に花の雲
・姿無く啼き声遥か初雲雀
・春雨や苗木潤し暗き外
・春夜明け雨音去りて外覗き
・花の雨多き蕾の恵みかな
・見渡せば伊勢路の海山霞敷き
・東風吹かば潮香微かな紀勢道
・櫛田川雪代入りてササ濁り
・春陰や日干す魚の味憂い
・船頭の此見よがしの月日貝
・木の実和え旅路の膳に浮かぶ妻
・伊勢参ついでの積荷釣り道具
・厳寒にエサ屋の出入り人疎ら
・ 日本海冬凪港時化の沖
・波ウネリ船ベリ濡らす冬の海
・寒風に風裏探す地磯釣り
・指伸びず凍てつく寒さコマセ溶き
・冬の磯コマセも効かず時や過ぎ
・寒さ耐え久しきアワセ素バリかな
・コマセども釣れぬ寒グレ寒き身ぞ
・寒グレのコマセたサラシ恵み潮
・雨近し雲の成り行き二月尽
・春兆し籠入る中でホバリング
・浅き春床の温もり夢の中
・ビルの街灯漏れ窓増し春未明
・夜目強く未明の起床春袷
・雨音の聞こえし夜深春寒し
・車窓見し陽射し麗かガラス越し
・春を待つ野禽一声山の奥
・唯一つ出でし山主蕗の薹
・鳥の声遅々に麗かガラス越し
・人知れず開花侘びしき寒椿
・茂る木々開花憚る寒椿
・寒の釣り耐えるも一理忍一利
・雪下し予算に喘ぎし村役場
・豪雪に木の枝お辞儀朝の庭
・雪雲や流され白みやがて消え
・古稀過ぎて老いし我が身や翁の日
・一茶忌や飼う鳥啼く憂い声
・蕪村忌やフォトに詠句絵筆真似
・鉢に土反し蛹の冬の虫
・ビル多き日陰の寒さ吹き曝し
・陽射し照り庭木に氷柱空の蒼
※氷柱⇔つらら
・夜雲間冴える満月見え隠れ
・永久誓う新成人の心意気
・節分に目ん無い千鳥目無し稚児
・朝日受け光る薄氷水溜り
・五箇山の明りが洩れし冬の窓
・豪雪の五箇山巡り夢叶い
・熟女の劣らぬ朱紅実万両
・山茶花の華やぐ庭で身繕い